ブラックダリア事件~3.ある事、ない事、とは~
注意※画像は普通の物ですが、文章
内容に残酷な物が含まれています。
耐性のない方はご注意下さい。
さて、エリザベス・ショートさんが何故に「ブラックダリア」と呼ばれていたのか。
地元の田舎街でも評判の美人さんで
年頃になると垢抜けてきて
本人は「有名になりたい」と単身、ハリウッドへ乗り込んで行きます。
当時の新聞はたいがい、ある事ない事どころか
「ない事ない事」
を書き立てます。
田舎街では美人でも、ハリウッドに来たら単なるワン・オブ・ゼム
頑張ったけどダメで
そのうち身を売るようになり、その結末がこれ、そこの若いお嬢さん
あんまり夢を見るんじゃないよ
てな内容です。
確かに、ハリウッドに来て、兵隊相手のバーでジュニアホステス(「準ホステス」とあります。正規のではない、という意味でしょうか)になると
たちまち彼女は人気者になりました。
艶やかな黒髪に、いつも黒いシックな服装。
当時、流行った「ブルーダリア」という映画に倣い、
ついたニックネームが「ブラックダリア」。
早くに二つ名を持ってるなんてすごいです。
スクリーンテストは何回か受けたようですが、
アクタースクールに行くとかコネをたぐるとかはしていません。
実際に、彼女に経済的援助をしようとする人(「パパ」ってヤツ)や
大きなコネクションに繋げてあげようとする人は結構いました。
ところが、本人は何だか見ていて本気度が足りません。
どうしたいのか具体的なイメージもつかめません。
そして「身を売る生活に云々」とマスコミは喜んで書いていましたが
実際は違いました。
いや、証言によると手とか口とかではあったのですが(ううう。書いてて生々しい)、「性交渉」はなかったのです。
なんできっぱり言えるかと言うと
膣が極端な発育不全だった
からです。
妹さんの証言によると14才くらいまで初潮が来なかったそうです。
膣の正確な深さなどは分かりませんが(本来、伸縮しやすい部位だし)、膣を使った性行為はほとんど不可能に近い状態でした。
こうした発育不全を持つ人は
体も小さかったりしますが
写真を見る限りでは、普通の健全なナイスバディです。
当時の検死では
「アンドロゲン無感覚症候群」
が疑われています。
これは染色体がXYやXYXでも
体や表現されている部分は完全に女性にしか見えない物です。
ん?
何か聞いた事がある……睾丸性女性化症候群……「リング」の貞子と同じです。
この症候群は「病気」ではないと私は思うのですが、確かに表現体は多様です。
エリザベス・ショートの場合、どこから見ても女性ですし、子宮もあって月経もあるので俗に言う「小野小町病」の方に近いのかもしれません。
本人もそれを知っていて、性行為は避けていたようです。
気になるのは、彼女の極端な放浪癖と生活能力の低さです。
とにかく軍人が好みで、いろんな人と手紙をやり取りしています。
これはお父さんへの憧憬もあったかと思います。
ハリウッドで女優になりたいと思う反面、
軍人の妻になって子供も生んで母親になりたいと願っていたようです。
ロスアンジェルス市警でこの事件の担当をしていた刑事さんの弁を借りると
軽い知的障害があったのではないかと思います。
高校を一年で中退していますが、これは持病の喘息のせいで
マイアミに療養に行った辺りから
なし崩しに生活が乱れて行きます。
ハリウッドや近郊で、同じようなショービジネス希望の女の子達とルームシェアしたり、頻回に引っ越しを繰り返していますが、定職には就いていません。
いろんな人に借金をし、前述した「終戦前に亡くなった婚約者の軍人」のお母さんにまで借金を申し込んだりしています。
ハリウッドに来る女の子達は
たいてい、ナイトクラブでバイトしたり
あるいは堅実な昼間の仕事に就いたりしたりして、昼か夜間のアクタースクールに通い、オーディションを受け、一定の年齢になってもチャンスがなければ諦めて実家に帰ったり、逆に、映画製作の仕事に就いたりします。
同じような夢を持つ女の子達と共同生活しながらも、彼女はマイペースで
日用品にも事欠き、ルームメイトから生理用品や化粧品まで分けてもらう生活をしてます。
やがて、お金が本当に底を尽き、借りるアテもなくなりますが
そこでいきなりサンディエゴに向かいます。
何があったのかは分かりません。
ただ、「有名になりたい」とハリウッドに出た以上、無名のままで郷里に帰る事が嫌だったのかもしれないし、実際はそこまで考えてなかったのか、何がしかのトラブルがあったのかもしれません。
それにしても何故、サンディエゴなのかは分からないままです。
そして、いよいよ本格的に
あの最悪の結末に向けて歩みが始まります。
けれど、こうした行動パターンをどこかで私は知っている…………そう。
「最貧困女子」
と呼ばれる若い日本の女性達です。
いつも読んで下さってありがとうございます。
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次回は「漂泊者」です。