ネジ巻き事件簿

精神的肉体的社会的側面から見た事件史。

下山事件~2.新藤さんのリストラ~

国鉄総裁・下山定則氏が轢死体で発見された、昭和24年7月5日。

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民自党政調係・佐藤栄作

熱く心優しい佐藤は呟く。


「オレが殺したんだ」


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貧乏人は麦を食え、な大蔵大臣・池田勇人

「まあ飲みんさい」

佐藤は官僚、下山総裁は国鉄への就職と、ルートは違えども
佐藤からすれば後輩の一人。

下山総裁は子供の頃から
駅名が全部言えたり、時刻表を覚えていたり、本当に汽車が好きな人間でした。


佐藤「あいつは総裁の仕事も、余剰人員の削減も嫌がっていた……なのに……オレが殺したようなものだ」

実は戦後になって数年。

日本はムチャクチャなインフレになっていました。

物価ですが大雑把に百倍にすると
大体、分かると思います。

昭和21年当時は700円の煙草が、23年には3,000円に高騰したり。
当時から煙草は高めの嗜好品でありましたが、インフレは進んでいました。

それで

「日本の経済状態を何とかしなさい!」

GHQに言われます。

池田勇人氏は、当時では珍しく
努力・友情・勝利
な演説で人を動かそうとはせず

「この場合は21.1%の利益が~」

と数字を出して語れるタイプ。

しかも、めっぽう頭が切れるし計画性もあるので
若くして大蔵大臣に指名された人物です。

GHQの経済顧問・ジョセフ・マセル・ドッジから
真っ先に出されたお題は

国鉄職員の12万人ものリストラ。

これには池田勇人氏も断腸の思い。


池田「……けどな。
やっぱり、今のままでは国鉄は滅びるぞ。


引き揚げ者や軍需工場から解放された者をいわば国策で雇ってたんだ。


職員総数が49万人って、ちと異常じゃわい。
人口と就労可能な男子と比較計算しても

25人に一人が国鉄職員。


年間の赤字は30億円(現在なら3,000億円相当)。

これが何年も続くと、国家が傾く」


佐藤「……職員だけじゃない。その家族の生活の糧を奪ってしまう。
引き揚げ者だけじゃない。
戦前から国鉄にいて
空襲の中、自分の家が燃えるのもかまわず、汽車とレールを守った職員も大勢いるんだ。
だから、オレもお前も、下山も苦しかったんだ」

池田「…………あんだけ汽車が好きな奴が
汽車で死んだのかのう」

佐藤「いや、汽車が好きだったからこそ、汽車で死ぬ事を選んだと思う」


一方、国鉄労組。

当時はパワーのある組織でした。

それが上を下への大騒ぎ。

当時、ストライキは犯罪。


「人員削減反対!!全面ストライキッ‼」


「それでは国民の足が止まってしまう!
何とか話し合いでっ‼」


「いっそクーデターを!!」


会議は踊る、されど進まず。

意見が別れて、あっちゃこっちゃ右往左往してる内に
人員削減、12万人のリストラは行われてしまいました。

そして、この昭和24年は
下山事件を含めた

国鉄三大ミステリー」

が起こります。


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下山事件から九日後に起きた「三鷹事件」。

無人の列車がいきなり暴走、転覆。


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下山事件から一か月後の「松川事件」。

レールの犬釘が抜かれていてため、列車が転覆。


多くの被害者と、謎を残した事件でした。

けれど、人々は密やかに噂していました。

共産党の仕業じゃない?」


この当時、共産党やリベラルは
極端に
怖がられたり、憧れられたり、嫌われたりしていました。

 

 


医師「…………この時代に産まれてもいないのに、よくも、まー、見てきたように」

水「時代背景など間違ってないか読んで頂きたくて」

医師「これは……ブログで書くと、自称保守が絡んで来るかも」

水「それはいいんです。そんな事より」

医師「そんな事」

水「下山総裁を殺して得をするのは、誰でしょうか」




戦後未解決事件史 (別冊宝島)

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いつも読んで下さって
ありがとうございます。

最近、玄関のドアノブを誰かが
ガチャガチャ回しに来ます。