ネジ巻き事件簿

精神的肉体的社会的側面から見た事件史。

下山事件~1.司法解剖所見~

風が強い千葉県某所から
場所を変えて
都内某所。


医師「お待たせ」

水「センセイ、お久しぶりですぅ」

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医師「あの、古い言葉だけど『ぶりっ子』しなくて良いから。
本当に久しぶりだね。

君が在学中に出したレポートはよく覚えているよ。
課題無視して

『有名推理小説司法解剖的間違いのケース』

を提出して『ふざけた生徒だ』と思ったよ。
けど、読んだら面白くて120点付けたんだよね。
悪魔が来たりて笛を吹く』の作中曲の欠点とか
『屋根裏の散歩者』のトリックにおける致命的欠点とか
結構、面白かったよ」

水「ありがとうございました。お陰さまで、赤点の分もクリア出来ました」

医師「全く、学校を突然、半年も休んで、いきなり学生結婚して、いきなり復学。
補修や補修の実習でタイトな中、国家試験も受かって」

水「自分探ししてたのと、結婚したので。
目先の学校より一生の男。
それにあの頃、睡眠時間毎日三時間だったのに、何故、国家試験に受かったのか私も謎です」

医師「教務も固まってたね。
そこそこの成績だったから良かったけど、じゃなきゃ、君は単なる不良生徒だったよ」

水「黒歴史はともかく。
メールでお願いした通りでして(バササーッ!)」

医師「これが集めた資料かい?」

水「いろんな要因が複雑に絡まってるという人もいますが
日本近代史の勉強をもっと、やっとけば良かったなと思います」

医師「しかし、ブログだっけ?
それで何で

 


下山事件

 

などという大きな話題を取り上げるの」

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水「別の事件史をテーマにする予定ですが
このケースに行きつきまして。
GHQ占領下の日本は、謎が謎を呼ぶ事件が多いですね。
それと、下山事件の背景を知っておくと、もうひとつの事件の分析がやり易くなりそうでして。はい」

医師「当時の資料、特に一般人が入手出来る物が限られてるのと
あの時代とは科捜研の技術的な差もあるので、簡単には行かないと思うんだけど」

水「『謀殺』『陰謀論』ではなく
『肉体的精神的社会的見地から見た事件史』
ですので」

医師「WHOか。
陰謀論的な物から離れるのは確かに良いと思う。
それにしても…………何故、わたしなんだ」

水「中立的立場のセクション、と言えばお分かりかと」

医師「むー」

水「時に西暦1949年(エヴァ風)。
昭和24年7月5日、国鉄総裁、下山定則氏が行方不明になり
翌7月6日に
国鉄常磐線東武日光伊勢佐木線の交叉する辺りの線路上で
バラバラの轢断遺体で発見されます。

当時の国鉄は12万人ものリストラをしなければいけないと
GHQやらドッチさんやら
いろんな人に命令をされてました。

大量の首切りに
心を痛めていた下山総裁。


この時、監察医務院は現場で一番に検証してますね」

医師「…………『自殺』と所見を出したね」


水「ところが
司法解剖では
東大と慶應大で
全く逆の結果が出た。

東大は
『死後轢断』。
つまり

 

『下山総裁は、別の場所で殺害されて線路に置かれた』


慶應大は
『生前轢断』。
つまり、自殺。

これは調べました。

東大は検察・検事寄りの
大本営に都合のいい結果を出す事が多いです。
慶應大は逆に、真実を希求してる傾向があります。

当時の国鉄労組は
めっちゃ力が強かった。
そして、日本政府もGHQも日本が
共産党化するのを恐れていた。

この東大の結果を受けて

『下山総裁は殺された』
国鉄労組に、いやGHQに』

という世論が巻き起こります。
普通の人達が、それを信じていました。
信じていなかったのは、毎日新聞ぐらい」

医師「うん。帝国大VS私大みたいな図式になってねぇ(遠い目)」

水「私は学閥、嫌いなんで、よく分からない議論の図式なんですけどね。
とにかく、下山総裁が自殺でも他殺でも
困ったり得したりする人がたくさんいた。
それで分散してる所見を何とか集めて見ました」

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医師「…………結果は?」

 

 

 

水「普通に自殺だと思います」

 

医師「ちょ、ちょっと。
ブログに書くんでしょ?
なのに結論、早すぎない?」


水「私が怒りを覚えてるとすれば
汽車が好きで、国鉄では職人堅気の心優しい下山総裁の死を
こねくりまわして、利用して
それで何らかの利益を得ようとした人達にですね。
そして、数日前の行動も含めて
それがどうして『他殺』になってしまいそうになったのか。

そこへ行くまでのロジックを知りたいんです。

公式会見予定の日に

 


日本の方向が決まったと言っても過言ではなかったのですから」


医師「……………………知りたい事を、出来る範囲で教えよう」


「下山総裁・謀殺」で売れた本と映画

日本の黒い霧〈上〉 (文春文庫)

日本の黒い霧〈上〉 (文春文庫)


日本の黒い霧〈下〉 (文春文庫)

日本の黒い霧〈下〉 (文春文庫)

謀殺 下山事件 (祥伝社文庫)

謀殺 下山事件 (祥伝社文庫)


日本の熱い日々 謀殺・下山事件 [DVD]

日本の熱い日々 謀殺・下山事件 [DVD]

これらのムチャ(デタラメ)なロジックは後日に。


時は遡り
昭和24年7月6日の夜更け。

民主自由党佐藤栄作(A作でもB作でもないよ)が、大蔵大臣・池田勇人(「貧乏人は麦を食え」と言ってないのに、言った事にされた大臣)の自宅を訪れる。

外は大雨。

池田「どうした、こんな時間にずぶ濡れで」

佐藤「国鉄総裁の下山が死んだ」

池田「えっ⁉まだ若いのに!?」

 

 

佐藤「オレが殺した」

 

続く


いつも読んで下さって
ありがとうございます。

今の所、無事です。