ネジ巻き事件簿

精神的肉体的社会的側面から見た事件史。

市原両親殺人事件~3.よくある青年期の地獄巡り~

歯医者に行っては悶絶している、千葉県某所から、おこんにちは。

閑話休題

事件の犯人とされた・被告の青年Sですが、小説の「蛇淫」とは違い、都会的です。
顔は言うなれば「昔の男前」です。
当たり前ですが、今風のイケメンではありません。
イマドキの22才と違って、かなり大人っぽいです。
何が言いたいのかと言うと
「普通の清潔感ある青年」
です。

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こんな感じ。


高校は市外の進学校で優等生。
早稲田大学理工学部に進学したかったようですが、受験には失敗。
他の説では、学生運動吹き荒れる大学生活に送る事を父親が反対した、
とありますが
違うと思います。

74年のオイルショックで高度経済成長終了、不景気がしばらく続きます。

一部の過激派グループも数少ない仲間内でリンチやったりして
それを革命の戦士的な行動だと思ってたら
本当に革命を起こせそうな人達はみーんな海外に行っちゃいました。
学生運動自体がオワコン化。

やっぱり受験に失敗した説の方が信憑性がありそうです。

てか、市原市なんですが、もうずっと中高一貫校や有名大学に行ける進学校を作ろうとしてます。
が、いまだに果たせず、勉強が出来る子は他の街に行っちゃうんですよね。

Sの両親はひじょうに働き者で、自営業を複数抱え、裕福な部類に入る家庭でした。

Sが大学受験に失敗した後、自立出来るよう、ドライブインを任せています。
仕事ぶりはマイペース
っつーか、働いたり働かなかったりだったようで、従業員がいますから
まあ、何とか。

いわゆる「モラトリアム」ってヤツでしょうか。

それで、ここがポイントなんですが


Sは両親と同居してない


んです。

もう一回書きますよ。

犯人として捕まった息子・Sは
両親と同居してない

んです。

小説や映画の影響力ってすごいな
と思うのは
てっきり私は小説や映画の通り
この息子・Sが両親と同居してて
職場も一緒で
毎日毎日、顔を合わせてるからグダグダで
ついにブチ切れ、とか勝手に思っていました。

最初はドライブインで寝泊まりしてて、稲毛区にアパートを借りて一人暮らしをしています。

千葉県に地理感ないとピンと来ないかもしれませんが、めっさ、離れてます。

Sは車で移動するのが常だったようですが、市原の中心地から車をかっ飛ばしても、かなりかかります。
多分、交際していた風俗嬢(昔のトルコ嬢)が千葉市内で働いてたから
それを念頭に入れると良いチョイスです。
近くに住むと、両親がしょっちゅう来るに決まってます。

件の風俗嬢ですが、どうやら「交際している」と思っていたのはSだけだったようです。
この風俗嬢に取ってSは、若いし、相手をするのが苦痛ではないし、お得意さん、といった所かもしれません。

都市化が進む街でフツーに勉強だけして大人になった純粋栽培された男性が
風俗嬢やキャバ嬢に入れあげるのは
昔からよくある話です。

Sは彼女のために、同じ稲毛区内にアパートを借りてあげてますから
「悪いヒモ男からオレが救うんだっ!」
てな義侠心があったのではないかと、これは私の憶測です。

要は「蛇淫」や「青春の殺人者」では
彼女と幼馴染みで、共有している思い出が一杯あって、だから離れられない絆があった、とゆー事ではないのです。

Sの高校生時代や両親の人間像が
どこを漁っても出て来なくて困ったのですが
「郊外が都市化する」
ってのは、こんな風に人のドラマも薄くするのです。

小商いは上手いけど大きなビジネスはしない両親。

理系に進みたかったのに何故かドライバーに
毎日、カレーやコーヒーを出す日々。
それでいて、将来の事は結局、親任せ、でも不満もない。

挫折や屈折や鬱屈が見えてきません。

大学を二浪して両親を金属バットで殺害とか
テレビも見せてもらえない監視された日常で、ついに家庭内暴力とか
そうした
「家庭であるがゆえのドロドロ」

「そのドロドロと向き合ったり受け流したりして大人になっていくプロセス」
が全然ありません。

映画の通りに「青春期であるがゆえの親殺し」には思えない
何だかよく分からない乾いた空気しか感じません。

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そんで、現在。立派なスノッブ

ドラマ性や人間味のない背景を原因に
それゆえ、裁判は錯綜し現在も謎だらけです。


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いつも読んで下さってありがとうございます。

次回は
「え?これで無罪?」
です。