ネジ巻き事件簿

精神的肉体的社会的側面から見た事件史。

ブラックダリア事件~1.華やかな悪夢~

注意※画像は普通の物の物しかありませんが文章だけでもかなり残酷です。
耐性のない方はご注意下さい。

ハリウッドは映画の街です。
商業もエンターティメントも東京に集中してる島国・日本と違って
得意分野があちこちに分散してるあたり、アメリカは広い国だな、てのが分かります。

それはともかく、
「快楽殺人」とか「連続殺人」が増えて困っているロスアンジェルス

1947年1月15日
若い主婦が赤ちゃんを連れて朝の散歩中
とんでもない物を見つけます。

若い女性の全裸死体。

それだけなら、この事件は
「変態な性欲を持った男に襲われた被害者」
として早くに解決していたかもしれません。

この主婦は相当、気が動転して警察に通報したのは良いけれど
自分の名前を言うのを忘れるほどでした。

何故なら
遺体は胴体を真っ二つに切られて
顔も切り裂かれていたからです。

身元不明女性遺体・ジェーン・ドウ1号は指紋を照合されます。
当時のタブロイト紙と警察は持ちつ持たれつ。
エグザミナー紙が取材の権利と引き換えに早く照合出来るようにファックス(みたいな機械)であちこちに指紋写真を送ります。

身元はすぐに判明しました。

エリザベス・ショート。22才。

ハリウッドで映画女優になる夢を持っていた彼女が
何故、こんな所で惨殺されたのか。

検死の結果、直接の死因は胴体を切断された時の失血死。

ええええええ!?

生きてる時に?

胴体の動脈を切断された時に
ほぼ即死状態だったようです。

そして、両方の口角が耳まで裂かれ
逆さ吊りにされて拷問を加えられていた形跡がありました。

マスコミの報道合戦が開始。

そして、今も未解決のままです。

この事件に魅せられ、独自に取材し
本を書く人だけではなく
オレが犯人だ
いや、アタシなの
と「自白」する人間は五百人。

名前を冠したバンドや
モチーフにした絵やオブジェも
ネットを見るとたくさんあります。

世紀をまたいで今も素人探偵が絶えないのは
やはり、その残虐さと
意図してか単なる偶然か
遺体がアートみたいに扱われているせいでしょう。


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エリザベス・ショートさん。美人くです。

けれど、「犯人探し」に興味がある方
推理などしたい方には
ここから先は不毛の内容です。

その短い生涯の結末を知って
私が思ったのは


「あ、これ、私もこうなってたかも」

という直感でした。

どんな人であれ、こんな風に殺されてしまう理由などありません。

が、このロスアンジェルスの空き地に置かれてしまうまでの彼女が
現代の日本の女性の抱える問題を体現しています。

それは「三つの無縁」です。

家族、地域、行政(あるいは福祉)、そうした物と切り離された結果の非業の死です。

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ありし日のエリザベスさん。

そして、調べると出てくるわ出てくるわ
すごい画像が。

人に忘れられる「二度目の死」は
もうしばらく来ないんじゃないかと思うくらいです。

そして、調べるほど
彼女のフワフワと地に足の着かない人物像が明らかになっていきます。

ブラック・ダリア (文春文庫)

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切断―ブラック・ダリア殺人事件の真実

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いつも読んで下さってありがとうございます。

次回「検死報告書」です。

 

市原両親殺人事件~6.マイ・ホームタウン~

うちの猫が飾ってあるカスミソウを
オヤツみたいにガッツリ食おうとするのを、毎回止めるため、花をトイレに飾ったせいで
トイレが何だか無駄にセレブ感出る空間に。

猫にとって美味しいんでしょうか。

千葉県某所より、おこんにちは。

事件物やルポタージュだと
事件が起きた地域や犯人の育った場所の歴史が必須のように描かれます。

生まれる場所は選べない
そして、犯罪を犯した人物にどれほど影響があったのか
あるいは、なかったのか。

こうした点で、市原両親殺人事件の犯人とされた息子・Sの住んでいた地域は
画一化された都市化が始まっていたのですが。
あんまりドラマを感じさせない地域です。

「どこにでもある地方のフツーの場所」
です。

南部は農業が盛んで京葉地区は製油やコンビナートや工業地区
中心部は商業。

都市化しようとして
やっちまった感があるのは
メイン・ストリートを作ったんですが、これがメインでない。

駅からアチコチ行ける別の道路が盛り上がってて、そっちは飲食店や雑貨屋やお店がひしめいています。

そして、企業誘致の会社に勤めてるのは東京からの人が多く
地元の人間は高校卒業後
勉強が出来る子なら別の街へ出ていきます。
高卒で勉強も好きじゃない場合、
この別のメイン・ストリートの飲食店やコンビニで働く人が、すごく多いです。

後はゴルフ場か介護施設です。

高層建築もないし、それがまた良いんですが。

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どこにでもある風景。

んで、メイン・ストリートを作ろうとして
市役所を作り、アパートやマンションを近くにいっぱい建てましたが
仕事の多い地域へ行くには
はっきり不便。

何しろ元々の中心地でなかった所

だった所です。

パワーシャベルで削った
山の上の市役所
同じような小さな家
どこまでも続く閑散とした公道

千葉県は地元企業が弱ってて限界集落になりつつある街も多いんですが
幸い、商業やら農業が頑張ってます。
結果、同じ県内でも
福祉や行政が追い付かなくて大変な事になってる場所との格差が表れています。

マイルドヤンキーも多いし
暴力団もひっそりと多いです。

要するに、いろんな意味で中途ハンパ。

こうした振興の街は意外と住みやすくて
ぬるま湯みたいなモンもあって
仕事を求めて出ていくとか
都会型の上昇思考や意識高い系の人には結構、キツいです。

前回、判決文をごく一部引用しましたが
結構、鋭い所を突いてるなぁ
と思った箇所もありました。

私の要約です。

「両親は
経済的には何の苦労もさせず、無理に進学も強制せず、仕事も与えて、物心ともに被告を支えて来た。
なのに『第三者がやった』と子供じみた答弁に終始して未だ幼いまま」

私でなくても疑問に思うでしょう。

その「第三者」を何故、調べさせないのか。

知られたら他の家族も殺すとか
脅されてるんでしょうか。
なら、なおさら捕まえてもらった方が良いんでない?

その「第三者」を誰にも知られず
「第三者」がやった証拠もなく
けれど無罪にして!

とゆー申述書。

うーん。
息子・Sのメンタリティは大学進学に失敗した18才のままではないか
と私は感じるのです。

「自分がやってない事を何がなんでも証明したい」

と冤罪と戦う人達とは、何だかちょっと、違います。
その結果として、得る物と失う物があるのに
何ら失ないたくないよう見えます。

司法や法廷の場はサクサクと機械的で
そんな風に客観視してないと出来ない仕事で、それは被告も同じです。

映画の「青春の殺人者」では
カッとなって父親を殺したいものの
その後の主人公はドライでした。
いろいろ中途半端に事後処理をしてその過程で自分探しになり
結局、自分がどれほど両親の庇護の元に守られていたのかを痛感します。

そうです。
そうしたドラマが現実のこの事件にはないのです。

振興地域と時代の波は遠く
若者らしいビッグな夢もなく
風俗嬢の接客サービスと本音の違いも分からず
申述書で自分の都合の良いように法廷を動かそうする
要は薄い人間ドラマ。

息子・Sは現在六十才過ぎてて
メンタリティーは十代のままに感じるのです。

真実がどこにあろうと
何だかグダグダで
もういいや
と思ってしまった私でした。

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マイ・ホームタウン。

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いつも読んで下さってありがとうございます。


 

市原両親殺人事件~5.何故して死刑になったのか?~

今度は胃痛で、あ痛たたたた。

千葉県某所より、おこんばんは。

混迷の時代は置いておいて
規律が幅をきかせる時代になってからの有名な「両親殺人事件」は、やっぱり米国のリジー・ボーデンです。

アイスクリームとは関係ありません(多分)。

父親と継母が斧で惨殺されて捕まりますが
裁判では状況証拠しかなく
鑑識能力も現代とは違います。
で、裁判ですが、モメにモメて
無罪になっています。

が、それを信じている人は少なかったようです。

後にマザーグースの唄にもなってます。

リジー・ボーデン斧を取り
母を40回 滅多打ち
自分のした結果に気がついて
父を41回 滅多打ち

無罪になった要因の1つには
「非力な女性が二人も斧で、こんなに無双状態で惨殺出来るのか?」
がありました。

確かに、アスリートでも、ちょっとなぁ
と躊躇する殺害の仕方ですが
斧って意外と女性が使うんですよね。

殺傷能力高いから。

ここで裁判がグダグダになっていったのですが。

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リジーさん。

さて本題
「市原両親殺人事件」
です。

「疑わしきは罰せず」
と言いますが、実際に冤罪か累犯者かの見極めは、司法のプロである弁護士・検察・裁判官でも、かなり難しいです。

凶器も血染めの衣類も見つかった、アリバイもない、動機はある
と有罪を求刑する検察
状況証拠でしかない、目撃情報もない
と無実を訴える弁護団

調べましたが、近親者を殺害して死刑になった判例は割りと少ないです。
それはそうです。

被告が厳罰に処されても、誰も幸せにならないからです。

そして、息子・Sの年齢を考えても
突発的な出来事であって強盗目的などではない事
前科もない事
同時期の近親者殺人事件での判決を見比べても
死刑はどう考えても重すぎます。

ただ不可解なのは
息子・Sは6000ページにわたる申述書を最高裁に提出してます。

600ページじゃないですよ。

ろくせんぺーじですよ(留置所の中って暇だろうしなぁ)。

件の「父親は母親が殺した。母親は第三者が殺した。自分は無罪」な内容です。
それと、この日あった親子での会話は知られたくない、
マスコミや他の家族に知られる事がない形で
司法や警察関連の人間だけに見て欲しい」
というような事が書かれてあるそうです。

これは「無茶ブリ」としか言いようがありません。

仮に再審となったら、アレもコレも洗いざい言ったり言わなかったりするのが裁判というモノ。

それに、逆にその方が有利になるかもしれません。

小説の「蛇淫」では
恋人を淫乱呼ばわりされてカッとなったのが動機です。
現実には何だったのか。

ずっと風俗嬢との交際をクドクドと非難され受け流して来た中で
あったとすれば何だろう
と私は考えました。

彼女への侮蔑ではないような気がします。
あくまでも私の妄想です。
それまで何を言われても馬耳東風だったのが激昂する内容。


うーんうーん(苦悩中)。


あ、そうだ。きっと
「彼女への侮蔑や中傷」
じゃない。


男のプライドを計りにかけた内容。


「お前は本気で『レンアイ』していると思っているつもりだろうけど
向こうは『プロ』なんだぞ。
現に、アパート借りてやっても
風俗も辞めないし、ヒモとも別れないじゃないか。
『金づる』にされてるのが、まだ分からないのか」


私なら、これでキレます。

仕事も金も与えられて、ぬくぬくと守られた生活。
普通は、そんなに彼女が好きなら二人でどこかへ行けばいい。
けれど、生活の基盤というか、そうした物を手放さないで済ませたい。

邪魔なのは両親だけ。


何か、「戦争を知らない子供たち」の世代以降、こんな風に
「自分は変わらず、周りの環境には自分の都合の良いように変わって欲しい」
って人が増えました。

裁判はグダグダになる事なく
割りとあっさり終わりました。

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陪審員の「疑わしきは罰せず」の風景。


判決文なんですが
すごい事になってます。

森炎氏(元裁判官)も触れていますが
ヘンに文学的な所が何ヵ所もあります。

「両親の霊に対する一毫の自責の念をも示さず」

とか。

判決文を読む限り見えて来るのは

「一度自白したのに、公判では翻して
『第三者がやった』
と責任転嫁して、しかもその第三者を言わず、事件を直視してないし
家庭内の問題ではあるけど、親として当たり前の心配だし
なのに、両親ともに執拗に刺されて残虐で
社会に与える影響も考えると
死刑が妥当」

要約ですが、ホントに判決文って
こんな風にセンテンスが長いんです。

そして死刑の判決文によく出てくる
「更正の見込み」
については触れられていません。
私が読む限りでは
ぶっちゃけ


無罪を主張したから死刑にする


という判決文です。


とは言え、息子・Sの言う『第三者』を
どうして頑なに話さないんでしょうか。

事件を起こした自分を直視したくない
この事件が最近なら

「自分の中に住む、もう一人の別の人格が」

と言い出しそうです。

その「第三者」に脅されてるんでしょうか。
なら、何故、無罪放免を勝ち得ようとするのでしょうか?

そして息子・Sは
「自分は映画の『青春の殺人者』ではない」
と言っています。


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もう1つの陪審員の風景。

現実はどうだったのでしょうか。



いつも読んで下さってありがとうございます。

次回は「マイ・ホームタウンを殺したい」です。


 

市原両親殺人事件~4.え?これで無罪?~

歯一本につき、4本の神経が通っているのが普通の人ですが
私の場合、
何故か神経が三本しかない歯があったり五本もある歯があったりして
とんな人でも多少はあるそうですが、こんなに無秩序な神経は珍しいと
歯科医に呆れられてる千葉県某所から、おこんにちは。

歯は、体で一番最後に作られる器官だからでしょうか。

本題に入ります(ホント、関係ない前フリでスマソ)。

私はよくある「事件簿」的な物を書くのが苦手なんです。
が、時系列で書かないと分かりにくい謎がたくさんあります。
暫しお付き合いお願いします。

月日時間は資料によって、いくぶんかは違います。


10月30日

昼間未明、父親のタイヤ屋の工場にて息子・Sを近所の人が見かける。

17:00 隣の食堂の主人が母親が風呂場の掃除をしているのを見かける。

同じ頃、電話で「今日は息子が来た」と話している(「今も居る」とは言っていない)。

17:30 反対側の隣の板金工場の人が
隣から大きな悲鳴と椅子か何かが倒れる大きな音を聞く(多分、犯行時)。

この時間に
姉が電話をするが誰も出ない。
心配して15分置きに11時まで電話をするが
やっぱり誰も出ない。

17:45 隣の食堂の主人が、台所で片付けをしている母親を見かける(どういう事?)。

19:20~19:30 隣の食堂へ母親が白米を買いに来る
(食堂のオカミさんが「萩本欽一の番組をやっていて、などなど」の証言をしているが
裁判では、前日の10月29日にも萩本欽一の番組をやっていたので勘違いだと断定している)。

11月2日
息子・Sが両親の捜索願いを市原警察署に提出。
その時、血液のついた座布団やゴザを提出している。
事件らしい。

姉は両親の失踪に奔走。
必死で探す。

息子・Sは金庫から(鍵は母親がいつも首からぶら下げていた)現金を持ち出し、ドライブインのスタッフに給料を支払っている。
残った現金で風俗嬢と飲食したり、いつもと同じように遊んでいる(の、ように見える)。
小指には11針縫う怪我をしているが、作業で切った、ぶつけた、と息子・S。

捜索願い提出の段階で、息子・Sが怪しいと警察は判断。
事情聴取。一貫して犯行は否定。

11月9日 東京湾父親の遺体発見。
11月10日 近くで母親の遺体発見。
どちらも刺し傷による失血死。
それぞれにタイヤのホイールが錘として、むすんであった。
母親の方は明らかに父親とは違う縛られ方をされていた。
十日近くも海に漂っていたので、遺体の損傷が激しかった。
そのため、検視の結果、死亡推定時刻が二人とも近いのか不明。

取り調べの間、自分はやってないと
ずっと主張していた息子・Sが
父親の遺体発見を聞いて、いったん自白。

若葉区の(晩秋の)休耕中の田から
自白通りにアノラック(ナイロンパーカーみたいな上着)発見。

シャツ、ズボン、靴下、ブリーフが包まれていた。
全てに血液が付着(父親の血液しか検出されず)。
シャツ類は、息子・Sの物だと姉が証言。

アノラックのあった場所より少し離れた土中から、登山ナイフ発見。
検視の結果、両親の傷と一致。殺傷に使われた凶器であると断定。
本人が購入していた。
ただし、自分のアパートに置いておいた物を持って来たのか
自宅に置いておいたのか判然としない。


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こういうタイプ。

言える事は
「息子・Sの供述通りに凶器(とおぼしき物)が発見された」
って事です。

自宅から大量のルミノール反応あり。

息子・Sは自白を翻し
父親は母親が殺した。母親は第三者が殺した。
その第三者は名前を言うと姉が傷付く人物」
と現在まで主張しています。

しかし無罪でも矛盾が出ます。

1.事件があったとおぼしき、
つまり、亡くなってるはずの時間に
母親の目撃証言がボロボロ出てくる。

2.息子・Sが自宅に居たかどうかが分からない。

3.母親が父親を殺害したのなら
その後で母親はニラ玉を食べた事になる(だったらすごい)。

4.発見されたシャツ類の血は
瀕死の父親を椅子に座らせた時に着いたと供述。
何故、寝かせない?

5.第三者が来て、母親を殺害したのなら
それまで息子・Sは何をしていたのか。

6.自宅に居たかどうかが分からない状態だが、母親が父親を、母親は第三者に、という流れを何故、息子・Sは知ってるのか。
その間、どうしていたのか。

7.息子・Sの自白通りに、凶器が見つかっている。

8.母親が父親を殺害したと仮定しても
動機が不明。

9.家屋や遺留品から何故、母親の血液が検出されなかったのか(裁判では、時間の経過による劣化のせいと断定。
え、近い時間に殺害された事になってるのに?)。

えーと。

母親が何だか理由が分からないが、父親を、主婦なら普段、よく使ってて場所も知ってる包丁ではなく
その辺にたまたまあった息子の登山ナイフで殺害。
父親は瀕死で助かりそうもない。
救急車を呼べば、母親が捕まる。
それには忍びないので二人で相談。

父親の体をどこかに、あ、渓谷から東京湾に近い場所、そこに遺棄しようなどなど。
母親、腹ごしらえ(やっぱり、本当ならすごい)。

そこへ、とある第三者がやって来て
何だか理由が分からないが、母親を殺害。
自分が疑われるから、シャツ類やナイフを捨てに行く。


すごい、やっすい昔の推理小説みたいです。

それも千葉県内にお住まいでない方には分からないと思いますが
若葉区

隣の区なのにめっさ、遠い

んです。
つうか、千葉市内そのものが広いです。
私は一時、よく遭難してました。

まとめると

母親が自宅で殺害されたのかどうか分からない。

息子・Sが事件当日、自宅に居たという目撃などがない。

金庫の鍵は母親から預かったのかもしれない。

息子・Sが犯人だとしたら、動機は何。

「名前を言うと姉が傷付く第三者」
って、結局、誰?

両親が失踪して捜索願い出して
お姉ちゃんは必死で探してる間
遊び歩いてたのはどういう心理?

読んでいて分かるのは
そこに見えるものが何だか重みのないペラペラな薄い生活でした。

離れられない地域の縁、溺愛と所有欲を押し付けて来る親
「こんなハズじゃなかった感」
の強い自分へのイライラ
どうしても別れられないソウルメイトみたいな恋人。

こんなん、全然、存在しません。
両親は風俗嬢との交際をずっと反対していて非難していました。
事件前夜も、ドライブインのスタッフの前でその事を叱った、それが動機だと書いてある本もありました。
けれど、そんな、親子ド喧嘩はしょっちゅうだったと思います。

状況証拠(曖昧な物も含む)は、てんこ盛り、加えて本人の自白から凶器が発見されています。

息子・Sは犯人と断定されます。
凶器が本人の物だから。
そして、死刑判決を受けます。

さて、息子・Sは
「理由なき反抗」
のジェームス・ディーンだったのでしょうか。

司法殺人 元裁判官が問う歪んだ死刑判決

司法殺人 元裁判官が問う歪んだ死刑判決

いつも読んで下さってありがとうございます。


次回は「死刑なのは何故に?」です。


 

 

市原両親殺人事件~3.よくある青年期の地獄巡り~

歯医者に行っては悶絶している、千葉県某所から、おこんにちは。

閑話休題

事件の犯人とされた・被告の青年Sですが、小説の「蛇淫」とは違い、都会的です。
顔は言うなれば「昔の男前」です。
当たり前ですが、今風のイケメンではありません。
イマドキの22才と違って、かなり大人っぽいです。
何が言いたいのかと言うと
「普通の清潔感ある青年」
です。

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こんな感じ。


高校は市外の進学校で優等生。
早稲田大学理工学部に進学したかったようですが、受験には失敗。
他の説では、学生運動吹き荒れる大学生活に送る事を父親が反対した、
とありますが
違うと思います。

74年のオイルショックで高度経済成長終了、不景気がしばらく続きます。

一部の過激派グループも数少ない仲間内でリンチやったりして
それを革命の戦士的な行動だと思ってたら
本当に革命を起こせそうな人達はみーんな海外に行っちゃいました。
学生運動自体がオワコン化。

やっぱり受験に失敗した説の方が信憑性がありそうです。

てか、市原市なんですが、もうずっと中高一貫校や有名大学に行ける進学校を作ろうとしてます。
が、いまだに果たせず、勉強が出来る子は他の街に行っちゃうんですよね。

Sの両親はひじょうに働き者で、自営業を複数抱え、裕福な部類に入る家庭でした。

Sが大学受験に失敗した後、自立出来るよう、ドライブインを任せています。
仕事ぶりはマイペース
っつーか、働いたり働かなかったりだったようで、従業員がいますから
まあ、何とか。

いわゆる「モラトリアム」ってヤツでしょうか。

それで、ここがポイントなんですが


Sは両親と同居してない


んです。

もう一回書きますよ。

犯人として捕まった息子・Sは
両親と同居してない

んです。

小説や映画の影響力ってすごいな
と思うのは
てっきり私は小説や映画の通り
この息子・Sが両親と同居してて
職場も一緒で
毎日毎日、顔を合わせてるからグダグダで
ついにブチ切れ、とか勝手に思っていました。

最初はドライブインで寝泊まりしてて、稲毛区にアパートを借りて一人暮らしをしています。

千葉県に地理感ないとピンと来ないかもしれませんが、めっさ、離れてます。

Sは車で移動するのが常だったようですが、市原の中心地から車をかっ飛ばしても、かなりかかります。
多分、交際していた風俗嬢(昔のトルコ嬢)が千葉市内で働いてたから
それを念頭に入れると良いチョイスです。
近くに住むと、両親がしょっちゅう来るに決まってます。

件の風俗嬢ですが、どうやら「交際している」と思っていたのはSだけだったようです。
この風俗嬢に取ってSは、若いし、相手をするのが苦痛ではないし、お得意さん、といった所かもしれません。

都市化が進む街でフツーに勉強だけして大人になった純粋栽培された男性が
風俗嬢やキャバ嬢に入れあげるのは
昔からよくある話です。

Sは彼女のために、同じ稲毛区内にアパートを借りてあげてますから
「悪いヒモ男からオレが救うんだっ!」
てな義侠心があったのではないかと、これは私の憶測です。

要は「蛇淫」や「青春の殺人者」では
彼女と幼馴染みで、共有している思い出が一杯あって、だから離れられない絆があった、とゆー事ではないのです。

Sの高校生時代や両親の人間像が
どこを漁っても出て来なくて困ったのですが
「郊外が都市化する」
ってのは、こんな風に人のドラマも薄くするのです。

小商いは上手いけど大きなビジネスはしない両親。

理系に進みたかったのに何故かドライバーに
毎日、カレーやコーヒーを出す日々。
それでいて、将来の事は結局、親任せ、でも不満もない。

挫折や屈折や鬱屈が見えてきません。

大学を二浪して両親を金属バットで殺害とか
テレビも見せてもらえない監視された日常で、ついに家庭内暴力とか
そうした
「家庭であるがゆえのドロドロ」

「そのドロドロと向き合ったり受け流したりして大人になっていくプロセス」
が全然ありません。

映画の通りに「青春期であるがゆえの親殺し」には思えない
何だかよく分からない乾いた空気しか感じません。

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そんで、現在。立派なスノッブ

ドラマ性や人間味のない背景を原因に
それゆえ、裁判は錯綜し現在も謎だらけです。


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いつも読んで下さってありがとうございます。

次回は
「え?これで無罪?」
です。

市原両親殺人事件~2.これで有罪なの?~

皆様、まだ続く歯痛に流動食しか食べてないのに何故に痩せないの
な千葉県某所より、おこんにちは。


昭和49年に起こった「市原両親殺人事件」です。

被告が再審請求している中で憶測や妄想全開のブログは書けないのですが
私が何故この事件に興味を持ったのかなど
見解みたいな物をお伝えしたいと思います。

遺体が発見されて息子・Sはスピード逮捕、裁判で死刑の判決、事実上、結審しています。
なのに何でこんなに長く息子・Sは無実を叫び、冤罪として支援している人達がいるんでしょうか。

息子・Sの犯行だとしたら、めちゃくちゃ矛盾が出るのです。

1.遺体発見時、両親が一緒の状態だったが、母親だけ訓練された特殊な縛られかたをしている。

2.両親は自営業で、一緒に食事をするのが常だったのですが、検視の結果、父親の胃は空っぽ。
母親の胃からはニラと卵とご飯が検出されている。
ちなみに朝食を食べた数時間後で、父親の腸からは朝食の内容物が残っていた。

3.父親は胸、腹に刺し傷を受けているが
母親は頭部を集中的に刺されている。

ここまでは
父親と母親の死亡時刻にタイムラグがある」
で済みます。
刺し傷やら縛り方やら単なる犯人の気紛れだとも考えられなくはないです。

ここからが重要です。

4.事件当日と推定される日、本当なら死亡してるはずの母親が
近所の食堂に白米を買いに来ている。


は?


このご両親はタイヤ屋やレストラン(ドライバー向けの、ドライブイン)のを経営してて
ご飯だけ、こうやって毎日のように買いに来てたそうなんです。
その食堂の店員さんは当日をはっきり具体的に証言してます。

雨が降ってて給料日前で欽ちゃん(萩本欽一)のテレビ番組をやっていたと
ひじょうに詳細です。

もし、父親だけが亡くなっていたら
それでも
ご飯を食べようとしてた事になります。

5.被告の衣類や家屋内に、母親の血液が見つからない。

どういう事でしょう。

母親は別の場所で殺害されたんでしょうか。

6.浴室のタイルに母親の足跡が残っていた。

もう、何が何やら。

父親は殺害されていて、一旦、浴槽に入れられて、お風呂のタイルを綺麗に洗って
そこに母親がいた、となります。

検視解剖では胃の内容物から死亡推定時刻を出します。

その精度が良いとは言いがたいのは
遺体が10日も海に浮いていたせいだと思うのです。

息子・Sの主張通り、「母親が父親を殺害した」としたら
その後でニラ玉とご飯を食べたのでしょうか。

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イメージ

ただ、特異なことではありません。
殺人を犯した後に遺体の前で食事する人はいます。
その時だけ、ちょっと壊れていたと言うか。

謎が深まるのですが
じゃあ、息子・Sが有罪であれば
それはそれで、やっぱり別の矛盾がたくさん出てくるのです。


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いつも読んで下さってありがとうございます。


次回は「え、これで無罪?」です。


市原両親殺人事件~1.3つのストーリー~

最近、周りが結婚ラッシュでメールやら電話やらに追われております。

「事件物ブログ」
じゃあないつもりなんですが、興味の対象があちこちへ向いてしまうので皆様
しばしすみません。


昭和49年の事件です。
私は子供でした。

んで、この事件のあった千葉県市原市
元々、農業や、時々少し漁協で生計を立ててた街です。

それが、この時代になって一気にコンビナートや鉄工場が乱立。
バブルが弾けても、財政は千葉県内では安定していて優秀です。
大きなショッピングモールもあります。
最近は、小さいお子さんと暮らす若い世帯も増えています。

始まりはこの年、11月に東京湾で中高年の男女の遺体が見つかった事からです。
市原市内の夫婦と判明。
先に書いてしまいますが、息子が犯人として捕まります。

が、この事件には3つのストーリーがあり、錯綜します。

1つは
作家・中上健次の小説「蛇淫」です。
事件を題材にして書かれています。
一人息子が犯人で、息子の視点から書かれています。

もう1つは
その「蛇淫」を元にした映画
青春の殺人者
です。


右京さん、カッコいいな。

この映画は当時、サブカル好きな人の間で話題になり
最近、再評価されています。
てか、バブルを未経験な若い世代が、ドラマの「相棒」を見て、水谷豊繋がりで見て
ブッ飛んだという感じです。

映画では、冒頭から父親が殺害されていて、息子(水谷豊)が浴槽に遺体を入れています。
仕事から帰ってきた母親(市原悦子)は仰天(当たり前か)。
息子は自首すると言います。
そこでグダグダな母子の言い合いが続き、息子は母親も殺害してしまいます。

息子はお金を持ち出して、恋人とあちこち行ったり遺体を河に流したりして……ラストは映画を見て下さい。

ただ、この映画の反響に異論を唱えた人がいます。

息子です。

両親殺人で捕まった息子・Sは
現在も無罪を主張して再審請求中です。
結審前にこの映画が上映された事によって
計り知れない苦痛を受け、世間に先入観を与えてしまったと主張しています。

3つ目のストーリーは言わずもがな、現実にはどうかという所です。
「冤罪」かどうかについては司法の専門家でも意見が分かれています。

親殺しは昔からありましたが、
戦後を抜け出して、ようやく衣食住が選べる豊かな時代になってからは、目立つ事になります。

この事件もかなり騒がれたようです。

そうして、調べてみて分かったのですが
被告(息子・S)が無罪主張の再審請求をしているせいもあってか
資料がすごく少ないのです。

他の冤罪を主張している事件では山ほど本があるのに。

それは
「真実を知る者」
が、この息子・Sしかいないように見えるからです。

この時代は「田舎」であった他の街を含めて、「都会化」が押し寄せて来た時代です。

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ジェームズ・ディーンを意識したと監督。

コンビナートの無機質で、それでいてエロティックなフォルム。
汚染される空気。
実際、90年代中頃まで
「市原喘息」
と呼ばれる一種、公害病がありました。
鉄工場が撤退し、空気汚染がなくなったので今は存在しない病気です。

それと、東京は交通網が発達してるので良いんですが、市原市内はすごく広くて車がないと大変です。
それでも比較的、バスが頑張ってるので(頑張ってるのはバス会社か)、お年寄りでも暮らしやすい街です。

東京間との急行や快速が通ってから
住む人達は一気に都会的な物を追いかけるように……でもないようです。

東京から移って来た世帯に対しても鷹揚です。
よそ者扱いもしないです。
市民性とゆーか、気質とゆーか、おっとりしてる人が多いんですよね。

で、元は宿場町だったので、風俗も昔からあります。

息子・Sは千葉市内の栄町という地域では歓楽街のソープ嬢と交際していました。
昔は「ソープランド」ではなく「トルコ風呂」と呼ばれていたので
「トルコ嬢」です。

彼女には内縁の夫(ヒモ状態)がいましたが、息子・Sは付き合いにのめり込み結婚したいと言い出します。

両親は交際を始めた頃から大反対していて
結婚なんかとんでもない
それで口論、激昂の上に殺害
というのが検察の描いた話です。

裁判記録を読むと

腑に落ちない

としか言い様のない気持ちになります。

何故ならば無罪でも矛盾が出るし
有罪でも矛盾が出るのです。

息子・Sの主張です。

父親は母親が殺した。
母親は第三者が殺した。
その第三者は知られると姉が傷付く人物」

何か、これもヘンな言い分です。

「その第三者の名前は言えないけど無罪にして」

って無理だろ。

そして、この息子・Sがある種の矛盾を抱えている人物ではないかと
私は思うのです。


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今も風景はこのまんまです。


死刑の理由 (新潮文庫)

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蛇淫 (講談社文芸文庫)

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いつも読んで下さってありがとうございます。


次回は
「有罪の場合の矛盾」
です。