ネジ巻き事件簿

精神的肉体的社会的側面から見た事件史。

市原両親殺人事件~4.え?これで無罪?~

歯一本につき、4本の神経が通っているのが普通の人ですが
私の場合、
何故か神経が三本しかない歯があったり五本もある歯があったりして
とんな人でも多少はあるそうですが、こんなに無秩序な神経は珍しいと
歯科医に呆れられてる千葉県某所から、おこんにちは。

歯は、体で一番最後に作られる器官だからでしょうか。

本題に入ります(ホント、関係ない前フリでスマソ)。

私はよくある「事件簿」的な物を書くのが苦手なんです。
が、時系列で書かないと分かりにくい謎がたくさんあります。
暫しお付き合いお願いします。

月日時間は資料によって、いくぶんかは違います。


10月30日

昼間未明、父親のタイヤ屋の工場にて息子・Sを近所の人が見かける。

17:00 隣の食堂の主人が母親が風呂場の掃除をしているのを見かける。

同じ頃、電話で「今日は息子が来た」と話している(「今も居る」とは言っていない)。

17:30 反対側の隣の板金工場の人が
隣から大きな悲鳴と椅子か何かが倒れる大きな音を聞く(多分、犯行時)。

この時間に
姉が電話をするが誰も出ない。
心配して15分置きに11時まで電話をするが
やっぱり誰も出ない。

17:45 隣の食堂の主人が、台所で片付けをしている母親を見かける(どういう事?)。

19:20~19:30 隣の食堂へ母親が白米を買いに来る
(食堂のオカミさんが「萩本欽一の番組をやっていて、などなど」の証言をしているが
裁判では、前日の10月29日にも萩本欽一の番組をやっていたので勘違いだと断定している)。

11月2日
息子・Sが両親の捜索願いを市原警察署に提出。
その時、血液のついた座布団やゴザを提出している。
事件らしい。

姉は両親の失踪に奔走。
必死で探す。

息子・Sは金庫から(鍵は母親がいつも首からぶら下げていた)現金を持ち出し、ドライブインのスタッフに給料を支払っている。
残った現金で風俗嬢と飲食したり、いつもと同じように遊んでいる(の、ように見える)。
小指には11針縫う怪我をしているが、作業で切った、ぶつけた、と息子・S。

捜索願い提出の段階で、息子・Sが怪しいと警察は判断。
事情聴取。一貫して犯行は否定。

11月9日 東京湾父親の遺体発見。
11月10日 近くで母親の遺体発見。
どちらも刺し傷による失血死。
それぞれにタイヤのホイールが錘として、むすんであった。
母親の方は明らかに父親とは違う縛られ方をされていた。
十日近くも海に漂っていたので、遺体の損傷が激しかった。
そのため、検視の結果、死亡推定時刻が二人とも近いのか不明。

取り調べの間、自分はやってないと
ずっと主張していた息子・Sが
父親の遺体発見を聞いて、いったん自白。

若葉区の(晩秋の)休耕中の田から
自白通りにアノラック(ナイロンパーカーみたいな上着)発見。

シャツ、ズボン、靴下、ブリーフが包まれていた。
全てに血液が付着(父親の血液しか検出されず)。
シャツ類は、息子・Sの物だと姉が証言。

アノラックのあった場所より少し離れた土中から、登山ナイフ発見。
検視の結果、両親の傷と一致。殺傷に使われた凶器であると断定。
本人が購入していた。
ただし、自分のアパートに置いておいた物を持って来たのか
自宅に置いておいたのか判然としない。


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こういうタイプ。

言える事は
「息子・Sの供述通りに凶器(とおぼしき物)が発見された」
って事です。

自宅から大量のルミノール反応あり。

息子・Sは自白を翻し
父親は母親が殺した。母親は第三者が殺した。
その第三者は名前を言うと姉が傷付く人物」
と現在まで主張しています。

しかし無罪でも矛盾が出ます。

1.事件があったとおぼしき、
つまり、亡くなってるはずの時間に
母親の目撃証言がボロボロ出てくる。

2.息子・Sが自宅に居たかどうかが分からない。

3.母親が父親を殺害したのなら
その後で母親はニラ玉を食べた事になる(だったらすごい)。

4.発見されたシャツ類の血は
瀕死の父親を椅子に座らせた時に着いたと供述。
何故、寝かせない?

5.第三者が来て、母親を殺害したのなら
それまで息子・Sは何をしていたのか。

6.自宅に居たかどうかが分からない状態だが、母親が父親を、母親は第三者に、という流れを何故、息子・Sは知ってるのか。
その間、どうしていたのか。

7.息子・Sの自白通りに、凶器が見つかっている。

8.母親が父親を殺害したと仮定しても
動機が不明。

9.家屋や遺留品から何故、母親の血液が検出されなかったのか(裁判では、時間の経過による劣化のせいと断定。
え、近い時間に殺害された事になってるのに?)。

えーと。

母親が何だか理由が分からないが、父親を、主婦なら普段、よく使ってて場所も知ってる包丁ではなく
その辺にたまたまあった息子の登山ナイフで殺害。
父親は瀕死で助かりそうもない。
救急車を呼べば、母親が捕まる。
それには忍びないので二人で相談。

父親の体をどこかに、あ、渓谷から東京湾に近い場所、そこに遺棄しようなどなど。
母親、腹ごしらえ(やっぱり、本当ならすごい)。

そこへ、とある第三者がやって来て
何だか理由が分からないが、母親を殺害。
自分が疑われるから、シャツ類やナイフを捨てに行く。


すごい、やっすい昔の推理小説みたいです。

それも千葉県内にお住まいでない方には分からないと思いますが
若葉区

隣の区なのにめっさ、遠い

んです。
つうか、千葉市内そのものが広いです。
私は一時、よく遭難してました。

まとめると

母親が自宅で殺害されたのかどうか分からない。

息子・Sが事件当日、自宅に居たという目撃などがない。

金庫の鍵は母親から預かったのかもしれない。

息子・Sが犯人だとしたら、動機は何。

「名前を言うと姉が傷付く第三者」
って、結局、誰?

両親が失踪して捜索願い出して
お姉ちゃんは必死で探してる間
遊び歩いてたのはどういう心理?

読んでいて分かるのは
そこに見えるものが何だか重みのないペラペラな薄い生活でした。

離れられない地域の縁、溺愛と所有欲を押し付けて来る親
「こんなハズじゃなかった感」
の強い自分へのイライラ
どうしても別れられないソウルメイトみたいな恋人。

こんなん、全然、存在しません。
両親は風俗嬢との交際をずっと反対していて非難していました。
事件前夜も、ドライブインのスタッフの前でその事を叱った、それが動機だと書いてある本もありました。
けれど、そんな、親子ド喧嘩はしょっちゅうだったと思います。

状況証拠(曖昧な物も含む)は、てんこ盛り、加えて本人の自白から凶器が発見されています。

息子・Sは犯人と断定されます。
凶器が本人の物だから。
そして、死刑判決を受けます。

さて、息子・Sは
「理由なき反抗」
のジェームス・ディーンだったのでしょうか。

司法殺人 元裁判官が問う歪んだ死刑判決

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いつも読んで下さってありがとうございます。


次回は「死刑なのは何故に?」です。