ネジ巻き事件簿

精神的肉体的社会的側面から見た事件史。

下山事件~8.最後の夜汽車~

今回で最終章です。


医師「…………君は最初に……」


水「まず、線路近くでうろついていた

『下山総裁に似た紳士が、時々、草をむしったりしていた』

という目撃証言ですが
背広のポケットから、カラス麦の実がいくつか出てきています。
これは食用に改良された最近の

『オサレなオーガニックな雑穀』

ではなく、フツーに雑草ですね。
手持ちぶさただったのが、よく分かります。

次は
検証本でよく話題に上がる、いわゆる『下山油』と呼ばれる物について」


医師「上着やワイシャツにはベットリとヌカ油が染み込んでいたのに、褌には少ししか染みていない、と言われている」


水「この時代って、服装は西洋に追い付いてるのに、下着がまだ遅れてますね。
『スーツにフンドシ』
ですよ!

以前、訪問先で
『紙オムツに勝負ブラ』
という方がいらして」


医師「話を進めて(泣)」


水「列車の整備には重油が必要なんですが
当時は混ぜ物をして使っていたようです。
で、こうした列車事故の場合、真っ先に車両や車輪に絡まれるのは衣類だと思います。
くつ下は無事でした。

『総裁の愛用していた
ロイド眼鏡・シガレットケース・ジッポライターが見付からない』

というのも話題になりました。

ロイド眼鏡なんですが、これ、ムチャクチャ熱に弱いんです。
フレームは溶けて、ガラス面は粉々になったんだと思います。
しかも、8分遅れで発車し、どこか慌てている運転手と走る列車、視界がきかない夜に大雨。

列車のスピードはかなりあったと思います。

どこかにはね飛ばされたのか。
近くの川もさらってますが未発見です。
これも原型を留めていない可能性があります。

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カラス麦


水「総裁の当時の精神状態なんですが、不眠を訴えて
主治医がブロバリン、医薬品名ブロムワレラレ……痛い、舌、噛んだ」


医師「ブロムワレリル尿素、ね」


水「一回0.5グラムを
何包か処方されてます。
この頃の総裁の不眠は重度で
一回分では効かなくて、何回か追加して飲んだりされる事もあったと夫人が仰ってます。

で、ブロムワレラレ……痛。

このブロムワレリル尿素てのは
あ、今度はちゃんと言えた。

現在でも存在しますが
あんまり処方されません。

最近はマイナートランキライザー
睡眠導入剤の質も種類も増えてますし
何より、この薬は
不眠にはひじょうによく効くし熟睡感もあるのですが


脳の活動そのものを低下させる作用があります」


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市販薬。

医師「……奇行はこのせいか」


水「多分。自殺にもよく使われた薬だそうです」


医師「…………結局の所は?」


水「全身の傷、擦過傷ですね。
その図です。
致命傷がない。
打撲や深い刺傷、絞殺後もない。

何より、傷が左右対称。

誰かの暴力を受けた場合、こんな風にはならず
相手が複数だとしても
右だけに多い、左だけに多いと偏りが出ます」

注※略図


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医師「…………では……」


水「列車に正面から衝突された衝撃による即死。
生体反応がないのは
既に亡くなっている状態で轢断されたから、です。

『体の血液を抜かれて殺害』説ですが
体幹が比較的、無事で所見を見る限り
肺にはたくさん血液が残っていますから、あり得ないと思います。

失踪当日
車で、あちこち回った行動ですが、うつ傾向のある人は
トランス中毒と言うか
乗り物に乗ってぼんやりしたがる事が多いです。

要人に何人か会いに行って、自分からブッチしてるのは
何とかしなきゃいけない気持ちが強く、けれども人と会いたくない
という、うつ傾向の人にある焦燥感や忌避感が伺えます。

本社の前を通り過ぎる時に
『もっと早く走ってくれないか』
と言ったのも、国鉄職員に姿を見られたくなかったんだと思います」


医師「うーん。符号が合う」


水「けど、みんなが殺したんです」


医師「え?どういう事?」


水「最初の仕事が大量リストラと分かってて
『君にしか出来ない』
と嫌な職務を押し付けた政府。

ギリシャの破綻を持ち出すまでもなく
国民の数人に一人が公務員、というようなデタラメな雇用を放置していた戦後の政府全体。

そして、次の再就職先や、その受け皿も用意せず、12万人もリストラした労働省

数字だけを見て、それを命じたGHQのミスター・ドッジ。


総裁は子供の頃は、お父さんの仕事の都合で転校を繰り返してます。
なのに、どこに行っても人気者でした。

汽車が好きで、界隈の路線や駅名を全部覚えられる、時刻表まで覚えてるすごさ。
何より、真面目で優しい人柄。

総裁は三越を出て、大学生の頃に部活のために
よく行っていた五反野に向かったんです。


そして、四時間も五時間も
死に場所を探していたんです。


列車を避けて柱にもたれかかっている姿を何人か見ています。

いつ飛び込むか、いざその時になると怖くて
けれど
もう、辛くて辛くて
丸一日、職場を放棄した上で
夜になって大雨になって


そして、ようやく線路の前に立ったんです」


医師「……………………」


水「その死をも、他殺にして
共産党狩りに利用しようとしたGHQと政府。

ところが、それこそ『GHQが絡む謀殺』にして、新聞や雑誌をガンガン売ったジャーナリスト。

これは困る、と慌てて
やっぱり自殺で発表しようとしたら
今度は

『心優しい総裁を自殺に追い込むGHQ

と、世論はやっぱり悪く言う。
これも分が悪い。

だから、直前になって公式発表は取り止めて、後はうやむや。
捜査本部も解散

これ、今なら過労死かパワハラか、ですよ。

おかしいと気付いてた人がたくさんいたのに
そして、睡眠薬も処方されてるのに
どこかで誰かが、無理矢理にでも休ませてあげていれば」


医師「うん。可哀想だな…………。
今は個人の会社が
そういう事を平気でやるんだもんな。
路線図や時刻表も覚えている人だったから
踏み切りもない…………自殺しやすい場所だと知ってらしたのかもな。
土地勘があっただけでなく、若くて楽しかった頃の思い出のある場所での
数時間の放浪だったのか」


水「国家単位のリストラだったんで、逃げられないと思われたのは分かります。
結果、リストラは断行。


これからどんどん人件費が下がって行くと思いますが
私はこうした悲劇を減らして行きたいです」


医師「…………ところで、中華街に行ってた『人探し』ってのは?」

水「その件ですが…………また、アレコレ聞きに伺ってもよろしいですか?」

医師「誰を探してたの」

水「私に瓜二つの親戚の、昔の仕事などを」

医師「さっぱり訳が分からないんだが」

水「とある事件を調べて、資料を掘ってたら思いがけなく、その人がちょっと……ムニャムニャ」

医師「とある事件?」


水「

 

 

帝銀事件

 

 

です」


医師「うわぁあああっ!
君、今度こそヤバい!」


新版・下山事件全研究

新版・下山事件全研究


古書で高価だったのですが、最近、復刻版が出ました。
情報量やその精度の高い良書です。

参考資料は他にもたくさんありますので、興味のある方はググってみて下さい。


いつも読んで下さって
ありがとうございます。


帝銀事件」編・COMING SOON(年内には、何とか)

そして、下山定則総裁のご冥福をお祈りします。

 

下山事件~7.時をかける金田一少年~

ブクマが直ら(r


ブクマやスター下さってる皆様、本当に申し訳ありません。
後日、お礼に伺います。

人様の死で遊ぶつもりはありませんが
読んでいて飽きるであろう事と(書いてる私も)
「謀殺論」があまりにひどくて
今回は趣向を変えてお送りします。


金田一一(はじめ)「現代の俺達が、何故この時代にいるかと言うと
敵のタイムリープで」


みゆき「はじめちゃん、それはいいから」


金田一「真実には遠い上に悪意かどうかは分からんけど、『あり得ない推理』してる、ある意味、戦犯の一人。


松本清張

あんたの罪は重いぞっ!」


松本「わたしはノンフィクション寄りの作家だし」


金田一「だから余計に影響力があってタチが悪いんだよ!

まず、

GHQやその下部機関で諜報のG2、いわゆるキャノン機関が
共産党や左翼のせいにするために総裁を殺して自殺に見せかけた』

って、ツッコミ所満載なんだよっ!」


みゆき「『見せかけて自殺』って、確かに変ね」


金田一「左翼もろもろのせいにするなら

『被害者が誰かすぐに分かる状態で、なおかつ暴行を加えて』

の方が効果的なのに
なんでワザワザ、『一見しただけでは誰か分からない』くらい、ひどい状況にまで遺体を損壊する必要があるんただ?」


松本「敵の力の強さを印象付けるため。
それに、わたしの推理した列車を使ったトリックなら完璧だ」


金田一「その

『列車を使ったトリック』がメチャクチャ


なんだよ!

『1201号の貨物列車に遺体を乗せて、あるいは田端駅で貨物用の列車を連結し、田端駅近くにある米軍工場で殺害した総裁の遺体を、五反野の現場に捨てた』

と言うのが持論だけど」


松本「おのれ小わっぱが。反証出来まい」


金田一「『1201号列車』は列車番号なだけでなく、種類も表してるんだ。


1201列車は

 

 

旅客用列車

 


なんだよっ!
占領軍の!


貨物を乗せるためのスペースなんかないんだ。
あんたが本を書いた時とは違ってるんだ。
しかも、上野から土浦までノンストップ。


田端駅には通過もしない」

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松本「え゛え゛え゛え゛え゛~⁉
あ、じゃあ、荷台に乗せて」


金田一「どんな状況なんだよ?それって。
荷台から窓の外へ『そおいっ!』と投げたりしたら
轢断されない場所に落ちる可能性が高いだろう。
周りは田んぼなんだから。

それに

当時のキャノン機関は
ほとんど仕事もしないでドンチャン遊んでたんだよ!」


松本「…………あ、映画監督との打ち合わせがあるんで失礼」


金田一「逃げんなぁあああ」


みゆき「はじめちゃん、お年寄りだから、これ以上は可哀想よ」


金田一「次は、朝日新聞記者・矢田喜美夫。
あんたのもメチャクチャだっ!」

矢田「謀殺だっ‼」


金田一「戦前はゴリゴリの保守で戦争をけしかけておいて、戦後あっさりリベラルに転向した新聞なのは置いといて。
だからこそ、スクープが欲しかったのが見え見えなんだよ!

あんたは捜査開始の直前、当時は最先端科学のルミノール液を集めて
線路をくまなく調べ、総裁と同じA型の血液の痕跡が大量にあると発表したけど
当時の列車にはトイレが付いていて
全部垂れ流しなんだよ」

みゆき「…………はじめちゃん、それって……」


金田一「そう。


女性の生理の経血だよ!


あの大雨でも流されず、地面に染み込んでいた血痕が多かったのは
毎日のように垂れ流されていた結果だったんだ。
それだけでなく、捜査では、総裁を轢いた列車の下部から、致死量の血痕がでてるんだ。
どう説明する?」


矢田「謀殺だっ‼」


金田一「おまけに、あんたは末廣旅館の女将さんの目撃情報が邪魔で

『女将さんと、その夫は共産党員で、金を貰って偽証してた』

と、あちこちで言い触らしたろう!
おかげで、女将さんは軽いノイローゼになり、末廣旅館の売り上げもがた落ち。

こんな悪意ある作為的な事をしてまで
謀殺論にした理由」


矢田「謀殺だっ‼」


金田一「『謀殺論』だと
新聞や雑誌がバカスカ売れるからだよっ!

『総裁が三越で複数人に拉致られているのを見た人がいる』

って、どこ情報だよっ!

店員一杯いたのに!

『夜に黒いビニールバッグに遺体を入れて、複数人で運んだ』?

総裁は5尺8寸、当時でもかなりガタイの良い体格。

それを
えっちらおっちら誰にも目撃されずに運ぶ?

夜中まで総裁に似た人物を目撃してる人が17人もいるのに⁉

ない事ない事を並べて、あんたの書いた本もベストセラーで、さぞ嬉しかったろうな」


矢田「謀殺だっ‼」


金田一「それから、キャノン機関もろもろの説を上げてる一般人!」


矢田「謀殺…………あれ?放置?」


金田一「(無視)『亜細亜産業』というダミー会社を通じて、怪しい朝鮮人の李某にやらせた
だとか
白洲次郎が関わってるとか
亜細亜産業』
白洲次郎が気の毒だよ!

この会社に白洲次郎が出入りしていた証拠もない。

同じ名前の会社は当時、いくつかあったし(今もあります)
白洲次郎池田勇人と講和のためにメチャクチャ忙しいし。

『下山総裁は、赤字の国鉄を民営化して外資系に売り飛ばそうとしていた』

とか、これ、バブル期終了後の日本か?
占領下でド貧乏で赤字だらけの国鉄をどうしたいの?

あり得ーんっっ‼」


みゆき「……はじめちゃん、みんな、どっかへ行ってしまったんだけど」


金田一「松本先生も矢田記者も
他の仕事は、すごく大きく意義ある内容なのに、どうして『下山事件』に関わると、おかしくなるんだろう……」

みゆき「『下山事件病』って呼ばれるらしいのよ。
総裁の亡くなり方が
あまりにも衝撃的過ぎるせいかも」


金田一「なあ、みゆき。
…………謎は解けてないのかなぁ」

 


さて、某所。

水「えーと」

医師「…………」

水「あ、怒ってらっしゃいます?」

医師「いや、君がアホなのは分かっていたからいい。
それより、確かに『総裁』という立場上、国家レベルの陰謀論が出るのは仕方ないとしても」


水「結局、『死後轢断ではない可能性がある』と
古畑教授も結論付けていますね」


医師「実際には」


水「みんなが殺したんです」


松本清張の陰謀―『日本の黒い霧』に仕組まれたもの

松本清張の陰謀―『日本の黒い霧』に仕組まれたもの

いつも読んで下さって
ありがとうございます。

 

下山事件~6.死体は語る~

注※そのものの写真はありませんが
遺体発見時現場の略図と文章に
具体的な描写があります。
耐性のない方はご注意下さい。


水「『死体は語る』んですよね」

医師「ああ、東京監察医務院の上野正彦先生のベストセラー」

水「学校の文化祭にも、特別講演でいらっしゃいました。
スライドもふんだんで、凄かったです」

医師「確かに、すごい文化祭だ」

水「遺体には必ず、死に至った痕跡が残ります。
どんなに偽装しても、です。

下山総裁の遺体は
監察医の八十島先生が一番に見ていますが
検分はされていても司法解剖はされていません。
東京医学部の古畑教授がされています。
後に慶應大と論争みたいになりますが
慶應大は司法解剖には関わってません」

医師「『報告書』や『所見』は
後で誰が見ても分かるように、具体的かつ細かく書くのだけど、その点は古畑教授は信頼出来ると思う」

水「問題は、この『所見』で何故に『死後轢断』になったかですね。

ヒトは生きている限り、致命傷を負っても体を修復させようとします。
それが『生体反応』ですが
古畑教授は『生体反応・なし』
とされています。

ただ、轢断された遺体の生活反応ですが…………これは探す方が難しいんではないかと思うんです」


注※遺体発見現場略図

 

 

 

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医師「バラバラではある」

水「現代の『電車』であったら、もっと細かくなってしまうと思います。

首は切断されてますが、頭全体を覆うマスクを外したように
顔面が剥がれて
下を向いた形で落ちています。
顎もバラバラに分散されています。

胴体ですが、こちらが写真です。
(お見せ出来ません)

骨盤の上辺りから180℃左に捻ったように下半身が曲がっています。
右腕、両足首切断。

衣類はほとんど剥がれて、半裸の状態です。

列車に衝突し、車輪などに巻き込まれた衝撃の強さがよく分かります」

医師「これは?」

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水「物議を醸し出した、両手の内出血です。
他にも眼窩の奥、陰のうと陰茎に内出血がありました。

三菱の貸金庫の他に
その……まあ、奥様以外の……」

医師「なんで急に歯切れが悪くなる」

水「えーと……。奥様以外の女性ともお付き合いなさっていて
この方は有夫なんですが
今で言う『W不倫』などではなく。

『浮気は男の甲斐性』と言いますが
浮気そのものがすごいんじゃなくて
イマドキの不倫は、お手当ても出さずに拘束して、相手女性の若さや時間を奪いますよね。

この時代の男性は
『相手女性がゆくゆく自立出来るように』
出資と言うか、きちんとお金を払って生活費を出したり、自営業をさせてる男性が多かったんです。

で、総裁もそうで。
この相手女性もかなり調べられたそうですが。

貸金庫の件も、この女性も
事件とは無関係だと」

医師「貸金庫に、いわゆる『妾』『2号さん』と来れば、マスコミに餌を撒いてるようなモンだね」

水「そこなんです‼
この思わせ振りな、二つのキーワード、貸金庫と2号女性が出てきて
ますます『他殺説』が燃え上がります。
あんだけ目撃情報があったのに!」

医師「これは?」

水「司法解剖結果の、頭骸骨の図です」


医師「傷は多いが致命的ではない」

医師「要するに『殺人』と思える刺傷や絞殺、打撲傷などがない」

水「そうです!

古畑教授は筋肉中の乳酸量とPH値の変化を測定し
出血量が遺体と現場には少なかったので
『死後轢断』
としています。

慶應大の中館教授は
この乳酸量云々の方法に疑問を呈しています。

そこで出たのが

 


『血抜き』

『金的』

 

 

です」

医師「……確かにアクロバティックだ」

水「他の場所で血液を抜かれて線路に置いた。だから、右腕が切断されてる。

…………めんどくさくありません?
それより、列車にかなり大量の血痕が付いてました。

次は
陰のうと陰茎、『タマとサオ』の内出血は」

医師「そういうボキャブラリーを使うのは止めなさい(泣)」

水「股間を強く蹴りあげられた。
それでショック死。

しかも
『こうした殺害方法は日本人ではなく、外国人に違いない』
とまで仰ってます」

医師「ものすごい偏見だな。
陰のうと陰茎の内出血だけど、現在では轢死体に多く出る所見なんだ。
理由は諸説あるが」

水「骨がない軟部組織ですからね。

体に強い衝撃や圧迫が加わると
末端の毛細血管に負荷がかかり、内出血を起こす。
両腕の内出血斑も、それで説明がつきます。

この当時は、列車事故が今ほど多くなかったのと
ここまで微細に調べられなかったんでしょうか」

医師「多分。しかし……『血抜き』や『金的のショック死』や、それこそ推理小説みたいな」

水「どうしても、なにがなんでも、『他殺』にしなくてはならない理由があったんだと思います」

医師「……『レッドパージ』か」

 

水「赤狩り、ですよね。明らかに。

『総裁は、左翼や共産党国鉄労組の人間に殺されたらしい。
共産主義って恐ろしい』

と大衆を誘導。

多分、GHQが日本政府に、そうするように働きかけた。

大規模なリストラをしなくちゃいけないし、これからも東アジアの軍需工場として、国民には
文句も言わずに働いてもらわなくてはならない。

『労働者の権利』なんて、邪魔」


医師「…………君が行方不明になったら、どうしよう」

水「イマドキの日本で、共産主義を怖がってる人がいるほど、リベラルは力ないですよ。

ところが、これが思わぬ方向へ」

医師「裏目に出た」

水「はい。

『下山総裁は、GHQやキャノン機関やらに謀殺された』

という記事が、
左翼や共産党国鉄労組・犯人説
より爆発的に燃え上がってしまったのです」

死体は語る (文春文庫)

死体は語る (文春文庫)


監察医が泣いた死体の再鑑定:2度は殺させない

監察医が泣いた死体の再鑑定:2度は殺させない


死体は語る現場は語る

死体は語る現場は語る

ザ・モルグ 1: CASE1 「溺死体」、CASE2 「変死体」

ザ・モルグ 1: CASE1 「溺死体」、CASE2 「変死体」


ザ・モルグ3: CASE4「虐待死」、CASE5「自殺死体」

ザ・モルグ3: CASE4「虐待死」、CASE5「自殺死体」

いつも読んで下さって
ありがとうございます。

 

下山事件~5.昭和の男~

ブクマの不具合が直りません(泣)。
詳しい方、教えてください。


下山総裁の遺体発見、捜査一課。


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平塚「なあ、石橋。
俺ぁよう。調べれば調べるほど、この事件には『事件』の匂いがしねぇんだ」

石橋「先輩らしくない。最初は
『他殺八割・自殺二割』
と仰ってたのに」

平塚「石橋。お前、この火鉢見て、どう思う?」

石橋「炭が燃え尽きて白くなってますね。
先輩の火の付け方は独特ですが」

平塚「炭を灰の上に置いて、新聞紙を細く巻いてよ。
炭の周りに何本か刺して、それから新聞紙に火を付ける。
するってぇと、炭にも簡単に火が付く。
俺からこのやり方を教わったヤツが、今朝一番に、ここに来て炭火を起こした。
けどよ、こんだけの炭を燃やし尽くすってなると、二時間はかかる。
とは言え、けどよぉ、昼間は捜査で誰も居なかった。

なのに夕方の今でも部屋は温けえ。

どうしてだと思う?」

石橋「むー」

平塚「単純に、そこのストーブに火を付けただけなんだけどな。
その方が早く暖まるしよ」

石橋「…………すごい推理を期待しちゃったじゃないですか!」

平塚「『捜査』ってのはそういう物だって教えたじゃねぇか。
細かい事実の積み重ねだ」

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一酸化炭素中毒に注意。

平塚「俺もよ、東大の偉い先生が『死後轢断』って言うんで、そうか、なら殺人だと思っちまったぜ。
けどよ。
『殺人』かどうかは分からねぇんだよな。

例えば
『別の場所で自殺してるのを線路に移動させた』
ってんなら『死体遺棄・損壊』な訳だ。
けど、そしたら何のためだ?
何でみんなして『殺人』に持って行こうとする?

写真も見たけど、マグロ(轢死体やその断片)って言うより、溺死体みたいだっろう?
大雨で遺体がふやけたんだ。
それに『殺人』なら、殴られたり絞殺されたりした跡があるはずなのに、そんなモンねえ。
かと思えば、胃の中は空っぽ。
どう思うよ」

石橋「ううーん。どこかで監禁された上に痕跡を残さない形で、そして線路へ」

平塚「な?やっぱり『推理』しちまうだろ?
有名な推理小説の『先生』もだが
最近じゃ床屋の店主と客が推理探偵ごっこしてやがる。

俺ぁ、推理小説ってのは、実際の捜査とはかけ離れた『物語』だと思ってる。

何でワザワザ
『伝説の通りに死体を見立てる』
んだ?
そんな事してて現場に長く居すわっちまったら、現行犯で捕まる可能性が高まるだろ?

『少年探偵団を使って証拠集め』?
ただでも素人で、しかも、じっとしてるのが苦手な年代のガキをたくさん集めて
加えて言うと、ガキってのは何でも誰かに喋っちまうのに?

何なんだ?世の中みんな、この事件を知ると『探偵』になりたがる。

俺ぁ、そいつが気持ち悪りいのよ」


前年には
帝銀事件」に関わり
後に
「吉展ちゃん誘拐事件」
を鮮やかに解決し
さらに後に
三億円事件
の捜査のリーダーとなる、名刑事を悩ますのも無理からぬ話でした。


下山総裁の遺体発見から
続々と目撃情報が集まったからです。


三越の一階で店員に目撃されています。

そして三菱本店では貸金庫に。

後日、実弟さんと立ち会いの元で開けたら
中には
三万円(現在だと300万円くらい)と
春画

この春画ですが
元々そんな物は無かったという説
あったけれど下手くそな絵だったという説があります。

これについては
「事件とは関係なし」
とされています。

そして、下山総裁は一万円を持って行っていました。

知人の方の出産祝いを贈る予定があったらしく
それでお抱えの大西運転手氏への
三越へ行ってくれ」
白木屋でもいい」
と百貨店に行くように指示したのではないか。
そう考える方が方が自然です。


そして吉田茂首相に会いに
首相官邸へ。
吉田首相はそこではなく
外相官邸に居たので移動。
来客中だけど、待っているように言われると


「会議があるから」


と引き止めるのも聞かずに
架空の会議を持ち出してブッチ。

警察庁に行ったり
けれど誰にも面会を求めず帰ったりしています。

こうした情報がボロボロと出て来ます。

ストライキだデモだ、で国鉄本社前は荒れていたので
7月4日だけでも
いろんな所に行かれています。

東京駅構内の公安局長室に現れて
東京新聞を見た後、本当にショックを受けていたようです。

元々、焦燥気味でしたが
決定的だったのは
国鉄職員の一次削減・三万人の新聞記事を見て

「三万人もやったのか」

と呟く総裁。

もちろん御存じのはずですが
目に見える形で数字を突き付けられて
改めてショックを受けたようです。

この後、前述の
「お茶は要らないと言いながら他人の飲み残しを飲む」
「他人の分のアイスクリームを
ズボンを汚しながら食べる」
などの精神的不安定な行動を見られています。

駅長が見送りに行きますが
「もういい」
と言います。
心配になって、更に付いていくと
駅長の肩を押し戻し
「もういいんだ」
と言って、それ以上は止めて
駅長は駅長室に戻っています。


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鉄板なのは、現場から近い場所にあった末廣旅館からの報告。

7月5日午後2時頃に下山総裁に似た紳士が現れます。

「少し休ませて欲しい」
と言うので部屋へ案内。

「水を一杯下さい」

と言うので女将さんはお茶を持って行きます。

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宿帳の記入をお願いすると
『下山総裁に似ている紳士』

「それは勘弁してくれ」
と断ります。

この紳士は夕方の6時10分まで寝ていて、200円を支払い、いわゆるチェックアウトしています。

結局、この紳士の名前は分からずじまい。

けれど、服装や靴の色、何より警察が公表してなかった「黒い綿の靴下」まで、女将はバッチリ覚えていました。

「殺人」の線で動いていた警察は蒼然。

この紳士が下山総裁なら
事件性がグッと下がります。


その後も、この線路の付近で続々と目撃情報が。

時には、カエル取りをしていた親子が
時には、畑仕事をしていた人が
時には、散歩をしていた人が
時には、銭湯帰りの親子が
時には、カエル取りをしていた別の親子が
時には、ザリガニ取りをしていた親子が
時には、煙草屋の店番の少年が(オイルを入れてくれと頼まれて、ジッポライターにオイルを足してあげてます)

ブラブラと歩いたり
トンネルを出たり入ったり
草をブチブチむしってたり
寂しげに煙草を吸っていたり
汽車を避けて柱の側にいたりしている
下山総裁に似た紳士を目撃しています。

線路のある界隈は田んぼが多く、いわゆる都会ではありません。
地域の人達は見知らぬ人に敏感。

それと、度々、汽車を避けている紳士を見て
危ないと思っていました。

しかも立派な服装をしていて、見るからに偉い人っぽいので
周りの風景から浮いていました。

だから、目撃した人達は不審に思い、ガン見し、一様に、よく服装や顔を覚えているのでした。

何より問題は
夜の11時から0時の目撃情報。

この紳士が下山総裁だとすると
「別の場所で殺害されて線路に移動」
は不可能です。


そうすると今度は

三越で複数人に拉致された」
「遺体は替え玉」
「線路の付近でウロウロしていたのが替え玉」
「貨物列車を使って遺体を高速移動」
「闇夜に紛れるように黒いビニールに遺体を包んで移動」

などなどの説が出て来ます。


再び時は戻り。


平塚「前に知り合った女に言われたんだけどな」

石橋「美人でしたか?」

平塚「そういう色っぽい間柄じゃねぇよ。
事件絡みでな。ちょっと不思議な女だったよ。

『正義も悪も、極端な色の色眼鏡でしかない』

って言ってやがったなぁ」

 


さて、現代の某所。

医師「…………この時代はまだテレビもないから、確かにスクープだったんだろうけど」

水「出版物はすごい事になってるのが
当時の記録をググっても分かります」

医師「肝心の司法解剖所見は?」

水「読みました。しかし、これもかなりアクロバティックでして」

医師「ふむ」

水「東大の古畑教授の名誉にかけて、捏造などではないと思いますよ。
ただ
『汽車に轢かれた時には、すでに亡くなっていた』
を巡る所見がアクロバティックなんです。

 


正義も悪も、極端な色眼鏡で見ると
真実が分からなくなります」


刑事一代―平塚八兵衛の昭和事件史 (新潮文庫)

刑事一代―平塚八兵衛の昭和事件史 (新潮文庫)

いつも読んで下さって
ありがとうございます。

 

下山事件~4.ミッドナイトトレイン~

皆様、ブクマ、スターありがとうございます。
何か不具合で一部のブクマにお礼が出来ていませんが
不具合が修正されたらお返しさせて頂きます。

励みになってますので感謝です。

 

さて、昭和24年7月5日。

その日、下山総裁は国鉄労組との会見や本社本部との会議など
タイトな予定がありました。

朝に自宅(大田区上池上町)から、運転手付きの車で出発。
8:20ごろ。

五反田・品川と出て御成門前に来ると
下山総裁は

「佐藤さんの所に寄るんだった」

と呟きます。

これは佐藤栄作の事と思われ。

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「引き返しましょうか」と、お抱えの大西運転手。

「いや、よろしい」
と下山総裁は答えます。

日比谷から和田倉門辺りで
「買い物がしたいから三越にいってくれ」
と言います。

下山総裁は
「今日は10時までに役所に行けばいいから……」
と呟きます。

東京駅北側ガードを抜けると、今度は
白木屋でもいい。まっすぐに行ってくれ」
と再び方向転換。

大西運転手「……(何だかおかしい。いつも決まったルートで出勤なさるのに……)」

白木屋は開店前。

また三越に戻りますが
やっぱり開店前。

大西運転手「開店は9時半ですね」

下山総裁「うん」

大西運転手「役所にまいりますか?」

下山総裁「うん」

大西運転手が車の方向を帰ると
再び急に
「神田駅にまわってくれ」
と下山総裁。

神田駅西口で
大西運転手「お降りになりますか」
下山総裁「いや」

本庁にまた向かうと
下山総裁「三菱本店にいってくれ」
と度々の変更。

国鉄本社前にさしかかると
下山総裁「もっと早くいってくれ(ちょっと怒ったら風に)」
と言います。

三菱銀行(当時は千代田銀行)の前で
ようやく車を降りる下山総裁。

店内に入って20分ほどしてから戻って来ます。
何をしていたのかは分かりません。

下山総裁「これから行けば、ちょうどいいだろう」

大西運転手は三越の開店時間の事かと思い、三越へ。

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下山総裁はたっぷり4.5分考えている風でしたが
「五分ばかり待っててくれ」
と言って車を降りると店内に入って行きました。

車内にはお弁当と書類の入った鞄を残したまま。

大西運転手は下山総裁のプライベートでの運転もしていて
「五分ばかり」
が数時間だったりする事がよくあったし
どこでどんな用事かも聞かないし
察していてもことさら他人に喋る事はない職務に忠実な人でした。

それで
たっぷり夕方まで三越前で待っていました。

 

 


下山総裁が三越の地下道から、どこかへ行ってしまったのを知らずに。
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一方、国鉄本社。


「総裁がまだ出勤してないんだって?」

「今日も労組との会見があるのに……」

出勤して来る気配のない下山総裁。

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「おかしい。遅刻するならするで、きちんと連絡を寄越して来る人なのに」

時間はもう昼過ぎ。

午後2時になって
局長がようやく
「秘密裏に」
と警察に相談。

捜査一課はまず、下山総裁の自宅に行きます。

下山夫人は
「自殺などが心配です……」
と不安そう。


実はここ数日の下山総裁は
同僚・部下を問わず懇意にしてる人、他人のメンタルに敏感な人から見れば
明らかに焦燥していたようです。

昼時はお弁当を持って、本社内をうろつき、会議室などで
ぼっちで食べていたり。


会議に来て
部下が気をきかして、お茶を淹れようとすると
「お茶は要らない」
と言って座り、しばらくすると
人の飲み残したお茶を飲む。

部下「…………あの、それ、わたしの……」

下山総裁「…………ズズー、ゴクン(ボーッとしている)」

部下「…………(疲れてらっしゃるんだろうなぁ)」

今度は人の分のアイスクリーム(アイスキャンディーの説もあり)に手を伸ばす。

部下「…………総裁、それ、僕の……」

下山総裁「……………………モグモグ、ゴックン(ボーッ)」

部下「…………(ズボンにボタボタこぼしてる……前はこんな事はなさらなかったのに……すごくやつれてるし、大丈夫かなぁ)」


と、以前の下山総裁からすると
少し奇行が表れています。


三越に姿を消した翌日の7月6日の夜中。
折しも大雨の綾瀬駅

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運転手「おおーい!列車に人の一部が」

駅員A「ああっ!どこで轢いたんだろう」

駅員B「白いし、ちょっとぽっちゃりしてるから女性かなぁ。保線関係に知らせて来ます」

当時の汽車では人を轢いても分かりにくい上に
夜で雨で視界も最悪。

自殺や事故にはある程度慣れてもいる運転手や駅員は、保線関係者に。

そこからさらに駐在所の山中巡査に報告。

山中巡査「協力要請。綾瀬駅にて……線路も調べるので……ん?
金歯か。そこそこ地位のある人かな。
…………背広?」

ポケットを調べる山中巡査。

「お、名刺と印鑑が…………下山……定……則…………ま、まさか⁉
昨日から行方不明になってる下山総裁っ⁉」


国鉄三大ミステリーの筆頭
下山事件
の幕開けでした。

 

医師「うーむ。これだけでも、かなり分かる事があるね」

水「三越と言えば、私、思い出がありまして」

医師「どんな?」

水「三越前にあるライオン像には、ジンクスがあったんです。
三越のライオン像の上に乗ると、希望校に合格する』
と。
それで酔っぱらって

 

予備校の仲間全員で跨がりに行きました。

池袋店でしたが(実話)。

何故か注意されなくて
ガードマンのオジサマが三人で私達のグループを見て
指差してクスクス笑ってました」


医師「そのガードマン達もジンクスを知ってたんだろう。
『あの子達、バカだ。本店の日本橋のでないと効力ないのに』
と言っていたに違……………………君は!

 

何をやってたんだ

その頃から、そんなアホだったのか‼」


水「ふふふ。青春の思い出です」

医師「…………話を戻そう。
この後、司法解剖の結果が分かれてテンヤワンヤになる訳だが」

水「午前六時に現場検証。
この時に最初に現場や遺体を見た医師は
監察医務院の八十島先生でしたね」

医師「結果は『自殺』。
轢死体を百体は見てきている人だった。
君は監察医務院にも実習に行っているが」

水「老衰・病死・自然死ではない、『不審死や、事件性が疑われる遺体専門の司法解剖を行う特別な場所』
だけあって、標本もスライドも凄かったです。

それはともかく、そうした『専門家』の判断をスルーして
大学病院で司法解剖に至ったのは
あまりにも話題が大きく
更なる調査を、と望む人が多かったようですが」

医師「そして、司法解剖バトルに」


東大・古畑教授は
「切断面に生体
反応が見られない。
死後轢断」
との結果を提出します。

下山総裁は
別の場所で殺害されて
線路の上に置かれた
と新聞雑誌は書き立てたのでしたが
果たして真相はどうであったのか。


下山事件 暗殺者たちの夏

下山事件 暗殺者たちの夏


下山事件(シモヤマ・ケース) (新潮文庫)

下山事件(シモヤマ・ケース) (新潮文庫)


いつも読んで下さって
ありがとうございます。

 

下山事件~3.日本フリーダム計画~

時は少し遡り、昭和20年。

日本は無条件降伏、そして占領下に。


諸外国は日本の敗戦を見越してて
さて、その後はどうするか。

本当なら、アメリカ、ソ連、中国で分割なんかも真剣に考えられていました。
元々は島国。
流通も外国頼みにして貧乏のままにして、文化も魅力的なアメリカのメディアをガンガン流して浪費させて
ついでに外国人との結婚もすすめて
そうしたら、勝手に衰退するだろう。

そう、ぶっちゃけ、フィリピンみたいな国になっていてもおかしくはありませんでした。

マッカーサーの所へやって来たのは
対日理事会ソ連代表の
クズマ・デレビヤンコ中将。

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写真がないのでモスクワ五輪ゆるキャラ・ミーシャ。

GHQだけで統治するのは大変でしょ?
あ、北海道はソ連が見ましょう!
そうしましょう!良い考えでしょ♪

あ、アメリカがダメって言っても

 

北海道はソ連が貰う事にするから!

 

凍らない港が欲しいし!」


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マッカーサー「(意訳)…………そしたら、も一回、戦争じゃワレ。
手始めに日本にいるソ連兵を片っ端から巣鴨プリズンにブチ込んだるぞ、覚悟あんのかゴルァ」


敗戦直前の日本に
日ソ不可侵条約を一方的に破棄して攻め混み、北方領土を奪ったソ連なわけですから
巣鴨プリズンにいる日本戦犯は
ソ連兵に恨み骨髄。

裁判の前にイビり殺されます。

スゴスゴと引き下がるデレビヤンコでした。


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こんな写真しかない毛沢東

中国は中国で
サンフランシスコ条約の前に

「中国は先勝国だから、領土をよこせ」

と言って

「…………あの…………おたくとは戦ってないんでは」

と断られ、それ以来、アメリカと、その占領下の日本を激しく恨むようになったとか、なかったとか。


しかも朝鮮戦争勃発。

そんなこんなで
「アメリカの植民地で貧乏な国」
にしておくには、もったいない。

地理的にもだし
物作りが得意で働き者な日本を生かしたい。

そして大統領への野心があるマッカーサーとしては
「日本を自由で豊かな国」
にした方が得策。

ついでに、ソ連への砦にし
軍需工場にしてしまえ。

そのためには

 

労働基準法とか共産党が邪魔。


豚は太らせて食え。

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誰だ、このイケメンは、な「吉田学校」の生徒の一人、池田勇人大蔵大臣。


医師「水野さん?今、どこ?
資料が手にはいっ」

水「蒸肉包子2,请!
あ、センセイ、すみません。今、中華街でして。
ご飯食べたら伺います」

医師「…………何故、中華街」

水「探してる人の手がかりがありまして」


それはともかく、国鉄職員大幅人員削減について
下山総裁の所へは誹謗中傷嫌がらせの雨あられ。

数日前には


吉田茂総理か下山を殺す」

というような脅迫状が何通かあまりました。

しかし、これに本気でビビってはいなかったと思います。


あの「吉田茂」ですよ⁉


この時代を知らなくても
どんだけすごい人物かは伝わっています。

仮に、何らかの嫌がらせが可能であったとしても
吉田学校
と呼ばれた「生徒達」はすでに内閣に散らばってたり、政治的影響力のある地位にいます。

どこに逃げようとも引きずり出され
「生徒達」から
フルボッコにされる事、必須。

「倍返し」どころか
500倍の仕返し、体が100人分あっても足りないくらいの目に遭うのが分かっています。

そして昭和24年7月3日。
第一次人員削減三万人を発表。

大規模なリストラは止めようがありませんでした。

次回、死の前日、下山総裁の一日を追います。





いつも読んで下さって
ありがとうございます。

日付や数字や人名ばかりのブログを書いてると
頭痛が痛い……。


下山事件~2.新藤さんのリストラ~

国鉄総裁・下山定則氏が轢死体で発見された、昭和24年7月5日。

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民自党政調係・佐藤栄作

熱く心優しい佐藤は呟く。


「オレが殺したんだ」


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貧乏人は麦を食え、な大蔵大臣・池田勇人

「まあ飲みんさい」

佐藤は官僚、下山総裁は国鉄への就職と、ルートは違えども
佐藤からすれば後輩の一人。

下山総裁は子供の頃から
駅名が全部言えたり、時刻表を覚えていたり、本当に汽車が好きな人間でした。


佐藤「あいつは総裁の仕事も、余剰人員の削減も嫌がっていた……なのに……オレが殺したようなものだ」

実は戦後になって数年。

日本はムチャクチャなインフレになっていました。

物価ですが大雑把に百倍にすると
大体、分かると思います。

昭和21年当時は700円の煙草が、23年には3,000円に高騰したり。
当時から煙草は高めの嗜好品でありましたが、インフレは進んでいました。

それで

「日本の経済状態を何とかしなさい!」

GHQに言われます。

池田勇人氏は、当時では珍しく
努力・友情・勝利
な演説で人を動かそうとはせず

「この場合は21.1%の利益が~」

と数字を出して語れるタイプ。

しかも、めっぽう頭が切れるし計画性もあるので
若くして大蔵大臣に指名された人物です。

GHQの経済顧問・ジョセフ・マセル・ドッジから
真っ先に出されたお題は

国鉄職員の12万人ものリストラ。

これには池田勇人氏も断腸の思い。


池田「……けどな。
やっぱり、今のままでは国鉄は滅びるぞ。


引き揚げ者や軍需工場から解放された者をいわば国策で雇ってたんだ。


職員総数が49万人って、ちと異常じゃわい。
人口と就労可能な男子と比較計算しても

25人に一人が国鉄職員。


年間の赤字は30億円(現在なら3,000億円相当)。

これが何年も続くと、国家が傾く」


佐藤「……職員だけじゃない。その家族の生活の糧を奪ってしまう。
引き揚げ者だけじゃない。
戦前から国鉄にいて
空襲の中、自分の家が燃えるのもかまわず、汽車とレールを守った職員も大勢いるんだ。
だから、オレもお前も、下山も苦しかったんだ」

池田「…………あんだけ汽車が好きな奴が
汽車で死んだのかのう」

佐藤「いや、汽車が好きだったからこそ、汽車で死ぬ事を選んだと思う」


一方、国鉄労組。

当時はパワーのある組織でした。

それが上を下への大騒ぎ。

当時、ストライキは犯罪。


「人員削減反対!!全面ストライキッ‼」


「それでは国民の足が止まってしまう!
何とか話し合いでっ‼」


「いっそクーデターを!!」


会議は踊る、されど進まず。

意見が別れて、あっちゃこっちゃ右往左往してる内に
人員削減、12万人のリストラは行われてしまいました。

そして、この昭和24年は
下山事件を含めた

国鉄三大ミステリー」

が起こります。


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下山事件から九日後に起きた「三鷹事件」。

無人の列車がいきなり暴走、転覆。


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下山事件から一か月後の「松川事件」。

レールの犬釘が抜かれていてため、列車が転覆。


多くの被害者と、謎を残した事件でした。

けれど、人々は密やかに噂していました。

共産党の仕業じゃない?」


この当時、共産党やリベラルは
極端に
怖がられたり、憧れられたり、嫌われたりしていました。

 

 


医師「…………この時代に産まれてもいないのに、よくも、まー、見てきたように」

水「時代背景など間違ってないか読んで頂きたくて」

医師「これは……ブログで書くと、自称保守が絡んで来るかも」

水「それはいいんです。そんな事より」

医師「そんな事」

水「下山総裁を殺して得をするのは、誰でしょうか」




戦後未解決事件史 (別冊宝島)

戦後未解決事件史 (別冊宝島)



いつも読んで下さって
ありがとうございます。

最近、玄関のドアノブを誰かが
ガチャガチャ回しに来ます。